マインドフルネス~仏教と心理学の話

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心理療法の源流としての仏教

仏教は、心理療法の世界に内観療法や、マインドフルネスなどの概念を与え、その発展に大きな影響があった哲学的な宗教です。内観療法は心療内科の分野で活用されていますし、「ACT」という心理療法では、仏教哲学(禅など)に由来する「マインドフルネス」を重視しています。「執着」という言葉も仏教に由来する言葉です。執着は良くないと仏教は教えているわけですが、心理療法の立場から言えば、「過度な執着は良くない」という表現になります。つまり、過度でなければ、執着も認めてよいということです。ただし、そのことを自覚し、コントロールできているということが前提です。

拙著『前世療法 医師による心の癒し』では、心のコントロールによって、うつ、パニック、不安などを薬に頼らずに改善できる方法をわかりやすい言葉で解説しました。

正しい想念の継続

そのひとつが、自分の思考と感情をたえずもう一人の自分が、冷静な目で観察する心理状態を維持していくことでした。この自覚している自分を、禅の言葉をかりて「御主人公」と表現しました。もうひとつは、「刻々に志を立てる」というものでした。これは、自分の主体的な意志がたえず働いている心理状態の維持です。そして、三つ目は、マイナス思考やマイナス観念が出るひまがないほど、刻々にプラス思考とプラス観念を創出していく技法でした。これは江戸時代の白隠禅師の言葉、「正念継続」と同じ主旨です。目前のことがら、作業などへの意図的な「没我没頭」も双璧をなす技法としてこれとセットで解説をしました。目前の体験に注意を集中することは、想念転換を可能にし、否定的な想念を手放すことにつながります。つまり、私が患者さんに指導しているセルフメンタルケアは、きわめて仏教思想(特に禅思想)に近いともいえます。これは欧米で、今、普及されつつある、認知行動療法に代わる新しい心理療法「ACT」とも重なっているところも多いのです。

ACT

ACT(アクト)は、アクセプタンス&コミットメント・セラピーのことです。1990年代末から普及されはじめたセラピーで、臨床行動分析的療法ともいわれます。ACTもまた仏教思想をベースに生み出されたセラピーであり、認知行動療法でも改善しないうつ病の患者がこの手法で救われています。マインドフルネスを重視しているのがACTの特徴です。マインドフルネスとは「気づき」という意味です。正確には、今の現実をあるがままに受け止め、それに対する思考や感情にはとらわれないようにする心の持ち方です。

負の観念に固着することが苦しみの始まり

マイナスの事柄から意識が離れない人、過去の嫌な記憶に縛られている人、やる気がでないといつもゴロゴロして何もできない人、特定の人間関係への過度な執着から離れられない人、こういった人は、実は、マイナス状態に執着しているだけなのです。マイナス状態に自分を縛り付ける努力を無意識にしているのです。この状態は習慣化されてしまっているので、これを変えるには、意図的に新しい習慣を育てることが必要になります。その場所を自分で出てくる時、心の自然治癒力が作動します。意識化されて、内的に悟れたら脱出は可能です。頭ではわかっても、どうしても動き出せない人もいるでしょう。そのような人の心のスイッチを入れるのが、前世療法などの催眠療法です。

心の筋力アップと心理療法

意志力が弱いとか、気力が低下して…と、悩んでいる人は、もしかしたら、肉体の疲労が重なっているのかもしれません。まずはよく眠り、栄養価の高いものをしっかり食べて、休むことです。生活リズムを修正することも必要かもしれません。また、精神的なストレスがたまっている場合は、スポーツなどの運動でカラダを動かしたり、カラオケなどで大きな声を出すことも、ストレス解消に役立つものです。しかし、そういった当たり前の努力をしても、それでも気力が出なくて、一日中横になっているとか、あるいは身の回りのこともできなくてゴロゴロしているという、悩みを持っている人が結構います。

精神安定剤による全身倦怠感に苦しむ人々

特に、抗うつ剤や安定剤などを服用している人に多いです。そして、どうしたらいいか分からないまま、ダラダラした状態をやむを得ず続けているのです。心の力は筋力に似ていて、使わないでいると、どんどん退化します。筋肉を使わないでいると、その力はどんどん弱体化しますが、心も同じような性質があります。自分の意志力を働かせて何かをするということを、ほとんどしない状態で、日々、休んでラクなことばかりをしていると、ますます、心の力が弱体化していきます。

心にもある程度の負荷が不可欠

一定の負荷がないと心の免疫力も育たず、健康を保てないのです。なので、いま、意志力が出ないとか、気力が出ないといっている人は、まずは、リハビリのつもりで、一歩でも二歩でも、意志力、気力を働かせることを毎日やってみるべきです。寝てばかりの人は、日に数時間でも起きているようにしましょう。何もしない人は、自分の周囲を片付けることだけでもやってみましょう。家にとじこもっている人は家の前をほうきで掃いてみましょう。頭は使えば使うほど良くなります。心の力も使えば使うほど強くなります。意志力は使えば使うほど、強くなるのです。

催眠療法は未来を好転させる

催眠療法は開運(願望成就)につながるのですか質問されることが多いです。「『催眠療法は開運(願望成就)にもつながる』とありますが、具体的にどのようなことでしょうか?わたしは特に恋愛運をあげたいですが全く叶わないです。」といった質問などです。催眠療法(ヒプノセラピー)そのものが願望実現のツールですが、催眠療法について、よく知らない人は、このような疑問を持たれることがあります。潜在意識の中に入った暗示が、現実化するというのが、催眠暗示の原理ですが、これは「思考は現実化する」という言葉に言い換えることができます。

良き未来の暗示が良き種まきになる

催眠療法とは、催眠状態で、患者の潜在意識の中に、現実化してほしい良い思考やイメージを定着させるセラピーであると言い換えることもできるのです。質問者のように恋愛運をあげるということをテーマにするならば、恋愛において成功し、幸福感に満ちている自己イメージや、恋愛において自分は願望成就できるという観念を、潜在意識の中に生じさせて、それを定着させれば、それが現実化してくることになります。前世療法を行う際にも、思い出される前世の内容そのものが、肯定的な成功している前世であることがあります。これは前世の物語そのものが、潜在意識において、プラス暗示として作用するケースです。

成功した未来を体験すると現実が変わる

恋愛であれば、幸せな恋愛をし、夫婦円満に家族に恵まれた前世が出てくる場合などがこれにあてはまります。こうした前世が出ない場合にも、前世療法の際には、自分の未来の成功イメージを魂の世界で見てくる体験をします。恋愛であれば、恋愛に成功しているその未来のシーンを見てくるのです。そして、未来の自分と対話して、成功するためのアドバイスをもらったり、未来の自分の持つポジティブなパワーを現在の自分の中に取り込んで一体化する作業を行うのです。こうしたプラスの思考、プラスのイメージを定着させるのとあわせて、マイナスの思考、マイナスのイメージを取り除くことも行います。

過去をどう解釈するかで未来は変わる

強いマイナス思考が、自分を縛っている場合は、その原因になった過去の出来事や過去世の出来事にアクセスして、その出来事に新たな光を当てて、より高い次元から見つめることで、できていた否定的な思い込みを解除することができます。特に通常の退行催眠だけでは解決しないような問題も過去世への退行つまり、前世療法では強力に因果関係を悟らせて、思い込みの観念をぶちやぶることができるのです。この手法は特に虐待やいじめなどの憎しみのトラウマを持つ人には癒しの効果が大きく、一度で激変される方も多いです。こうすることで、自分の思考と言葉と行動が次第に変わっていくので、現実においても、恋愛運をはじめ、あらゆる面が向上することになります。

許せない人を許す方法~前世療法の視点から

前世療法を受ける人の中には、時に、肉親との前世でのかかわりがあまり良いものではなかったケースがあります。前世でひどいことを自分にした相手が、今生では配偶者や両親になっているケースです。このような前世が出た人にとって、その体験は非常に強い衝撃を与えます。そのため、本人にそれを受け止める準備ができている場合でないとこういったものは出てきません。逆にいえば、それが出たということは、あなたには乗り越えられるはずですよとのメッセージです。そして、こういった事例では、実際に両親や配偶者との関係でこれまで苦労を重ねているケースが多いです。なぜ一緒に生きているのか。それは相手を許容し、許せるようになるためです。ではどうすればそれができるのでしょうか。

因果応報の法則を悟るための前世療法

まずは、自分が理不尽な目にあうのは、自分自身の前世での行為のあがないであることを知り、相手への憎しみを和らげることです。そして、相手の魂の未熟性を理解し、ともに魂を磨くために歩んでいる仲間であることを受け入れることです。自分の中に相手へのこだわりがあると、それがいかなるものであっても、執着になるゆえに、ふたたび、来世でも出会うことになります。自分にとって良き相手であれば、来世でも会いたい、ともに生きたいと願うことは問題ありません。そうでない相手の場合、自分が憎んでいたり、許せないでいることが、一つの執着ですので、ふたたび相手を引き寄せてしまうのです。あなたが執着を卒業すると、来世では出会ったとしても形が変わります。もう少し、良い関係を保てるような位置で出会うことでしょう。

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